fc2ブログ
menu

ハワイ島マウナケア山頂 すばる望遠鏡の見学に行ってきた

ハワイ島マウナケアの山頂には世界各国の天体望遠鏡が集まっています。
日本もすばる望遠鏡を稼働させていることはご存知かと思います。

2018年4月にすばる内部の見学ツアーに参加したのでレポートいたします。

目次



予約方法


すばるの公式サイトから見学ツアーを予約することができます。

一般見学案内 - すばる望遠鏡

ハワイ観測所では、マウナケア山頂にありますすばる望遠鏡のドーム内を一般の方々にご見学いただき、研究施設をじかにご覧いただくプログラムを催行しております。ただしこの地域の文化的社会的条件および自然環境保護の観点から、また人間にとって必ずしも快適ではない環境にありますことから、事情をよくご理解の上、ご訪問をご検討ください。


見学ツアーの予約ページはこちら。

Subaru Telescope - Summit Tour Schedule

Subaru Telescope - Summit Tour Calendar すばる望遠鏡 山頂施設見学カレンダー



時間の記載があるところがツアー催行日となっており、日本のマークがあるところは日本語で、アメリカのマークがあるところは英語でのツアーとなります。
時間帯をクリックできる箇所が予約可能なスロットになっており、希望の時間帯を選んでいくつか注意事項に同意したのちに入力フォームが表示されます。
20180504_01.jpg

ここからは英語になってしまいますがわざわざハワイ島に行こうなんて人の英語力であればそんなに難しくないので大丈夫でしょう。申請するとメールが届きますのでこれで予約は完了です。
20180504_02.jpg

SIMフリー端末と現地SIMを調達した人は、現地での電話番号がわかり次第「To Edit」のリンクから連絡先を更新しておくとよいでしょう。日本の電話番号にかけるとお互い国際電話料金がかかってしまいますからね。実際に事前の確認などの理由で電話がかかってくることはありませんでしたが。


すばる望遠鏡までの道



予約は簡単なのですがハードルが高いのはすばるまで到達すること。ざっくり言うと以下のリスクを負わなければなりません

  • ビジターセンター・山頂間の往復の運転はとても大変
  • 山頂までの道はレンタカーの保証外
  • 山頂まで行けるのは4WDに限られる
  • 4WDのレンタルは高い
  • 4WDの車は燃費が悪い

先日紹介したマウナケアビジターセンターまでは、普通の車で簡単にたどり着くことができますが、
ビジターセンターからマウナケア山頂までは標高差1200mのうち半分が未舗装となっている道路を登っていかなければなりません。
道程の半分は未舗装道路のため4WDの車が必要になります。下りではエンジンブレーキを最大限に効かせるためマニュアルシフトモードがある車が必要になります。逆にそういう車でないと安全に登って降りてはこれないでしょう。

さらに厳しいのが、ビジターセンターから先の道はレンタカーの保証外となること。つまり事故ったりトラブルがあったりすると全額自己負担となってしまうということです。もちろん車はかなり速度を落として運転するので、事故の可能性はあまり高くないのですが、怖いのはエンジントラブルや落石。

先ほど言ったようにエンジンブレーキを最大限に聞かせて2速で降りてくることになるのですが、傾斜がきついため時速40キロくらいは簡単に出てしまいます。そうすると4000回転くらいを維持して降りてくることになるのですが、ひたすらエンジンがうなるため結構心配になります。

落石なんてと思うかもしれませんが、頂上付近の路肩にはハンドボール大の岩がごろごろ転がっています。そんなものが直撃したらと考えながら運転するのは非常にストレスでした。

今回すばるの見学のために全日程でジープを借りたのですが普通の車であれば1日6000円程度で借りられるところを1日10000円払いました。8日間で32000円の差額です。

また、燃費もリッター10kmいきません。(日本版のジープラングラーは7.5km/L)いまどきハイブリッドじゃなくてもリッター15kmくらいはいくものですが。

車に関しては面倒でもすばるの見学の日だけ別にして借りるべきだったなぁと反省です。


すばる望遠鏡の周囲



そんなこんなを乗り越えて、すばる望遠鏡へ。

DSC03487_R.jpg

左側がコントロールビル、右側が望遠鏡ドームです。ちなみに左奥の丸い建物はケック望遠鏡です。しつこいですが曇ってます。標高4200mですよこれで。


ビジター用の駐車場は画面右です。1台車が停まっていますが、あれが私の乗ってきた車です。



DSC03512_R.jpg

コントロールビルにはこんな張り紙がありまして見学はドーム側が入り口となります。予約時間の15分前に到着したのですがドームの入り口ドアは施錠されていました。

ドーム入り口には特に案内もないのでどうしようかと思案していたら中から担当の方が出てきてくれました。


私1名+4名のグループの予定だったようですが、4名グループは予定の時間になっても到着せず、
プライベートツアーとなりました。


すばる望遠鏡見学ツアー


ツアーの流れ自体はこちらのヴァーチャルツアーをご覧になったほうがわかりやすいと思いますので割愛します。

すばる望遠鏡一般見学 ヴァーチャルツアー - すばる望遠鏡

null


ここでは私なりに見聞きしたことを中心にお届けしたいと思います。

すばるは税金で運営されているため内部に撮影不可の場所はないそうです。もちろん一般人が立ち入れる場所は制限されていますが、ツアーで見られる場所はすべて撮影OKでした。

DSC03521_R.jpg

ドーム3階から見たすばる望遠鏡。青い塗装がプレアデス星団らしくて美しいです。


ご存知かもしれませんがすばるの架台は経緯台式になっています。鏡筒は(この写真では)前後にしか動かず、左右は鏡筒を収納するドーム全体を回転させることで全天の観測を可能にしています。



DSC03516_R.jpg

その写真がこちら。
奥側がドーム、手前はエレベーター塔です。
ドームとエレベータ塔の間には2cmほどのすきまが開いていて物理的に分離されています。
夜間ドームが回転している時にドームに立ち入ろうとしても目の前にはドアがないという状況になります。

そもそも職員がすばる望遠鏡に滞在するのはカメラの切り替えやメンテナンスを行う昼間の間だけで、夜には無人となりリモート操作のみで観測が行われるそうです。

今回はドーム外側のキャットウォークも案内していただきました。特に珍しいものが見られるわけではありませんでしたが、
DSC03556_R.jpg
回転する部分と固定部分の境目がキャットウォークの高さにありました。
写真の真ん中の黒い線より上が回転する部分です。キャットウォークそれ自体はドーム外装の点検整備で使われます。外装パネルを留めるネジが時々外れたりするそうですよ。

ところでこの経緯台、シャッターを開ける前に対象の導入が完了するのだそうです。「え?なにそれずるい」とつい言ってしまいました。


私たちが日々やっていることに置き換えると、レンズキャップを外す前に赤道儀のアライメントも鏡筒のピント合わせも構図合わせも終わっている。ということになります。全く意味が分かりませんね。
薄明終了と同時に露光を開始できるなんてうらやましいです。

そして次に特筆すべきは能動光学補正でしょう。
天体ファンであればご存知かと思いますが大気のゆらぎや主鏡の微細な歪みをコンピューターでリアルタイム補正して、得られるデータの精度を上げる技術です。すばるでは261本のアクチュエータで主鏡のゆがみをリアルタイム補正しているそうです。

ここ数年の技術の進歩でオートガイドが一般の天文ファンにも使える技術になったのと同様に、
能動光学補正が市販の反射望遠鏡にも搭載される日は来るのでしょうか。いつになるかはわかりませんが、きっといつか来ると期待しています。私そのころ生きているかしら。

DSC03548_R.jpg
ドーム5階の展望デッキから

真ん中にある黒い筒状のものはカメラでいう絞りのようなものだそうです。具体的にどのぐらい絞るのかといった光学的なデータは聞けませんでしたが基本的な構造は普通のカメラと似ているんだなぁと妙なところで感心してしまいました。

この写真の左右には可視光と赤外線のナスミス焦点があり、絞りの付け根あたりに仕込んである反射鏡で光を導いているそうです。

この写真の上部、円形フレームの中心には2012年ごろ(?)稼働を始めたHyper Spreme Cam(HSC)が設置されています。アテンドしてくださった広報の方も「あのカメラはすごい」と自信満々におっしゃっていましたしすばる望遠鏡とHSCの目覚ましい成果はすでに周知でしょう。

今回改めてHSCのスペックを確認してみたのですが、前面レンズの直径はなんと82cmだそうです。
82cmのレンズってなんですかね。
82mmのレンズなら持っているのですが・・・。

Hyper Suprime-Cam

Hyper Suprime-Cam Official Home Page




ドーム1階に戻り、主鏡のメンテナンスをする装置を見ることができます。すばる望遠鏡の主鏡は1枚ガラスにアルミ蒸着を施して作られていますが数年に1度そのアルミ蒸着をすべて剥がして再度蒸着させる必要があるそうです。
そのための設備が望遠鏡本体の下に設置されているわけですね。

DSC03559_R.jpg
天井の上にはすばる望遠鏡本体が設置されており、
そこから取り外した主鏡をこの穴から取り出します。

DSC03560_R.jpg
こちらの装置で主鏡を移動させ、

DSC03558_R.jpg
こちらの装置で主鏡に塩酸(だったかな・・・)をかけてアルミ蒸着を剥がします。
有毒ガスが発生するためこの工程を行う際は立ち入り禁止となり、完了後もしばらくの間はガスマスクをつけての作業となるそうです。

DSC03557_R.jpg
奥に見える薄緑色の装置が蒸着窯となり、こちらで再度アルミ蒸着を施すのだそうです。

主鏡のメンテナンスについてもすばる望遠鏡のサイトに詳しい説明がありましたので、興味のある方はぜひどうぞ。

トピックス - 主鏡のアルミニウム蒸着作業 - すばる望遠鏡

「フィラメント」は望遠鏡に金属の反射膜を作る蒸着作業で使われるものです。身近なところでは豆電球などに使われていますが、すばる望遠鏡の主鏡のメッキに使うフィラメントはくるくると巻いた長さが19cmもあります。ガラスの直径が8m30cmの1枚の鏡、主鏡の全面に反射膜を作るためには、この大きさのものが1度に288本必要です。素材のタングステンは米国から素線として日本に送り、仕様に従って整形されてか...



DSC03563_R.jpg
その後入り口で改めて模型を見ながら見学の復習をし、ツアー終了となりました。

プライベートツアーということもあり、天体観測に限らずハワイ島での生活の話などもお伺いすることができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。
アテンドしていただいた広報の村井さんには感謝です。


まとめ


すばる望遠鏡とはいえ、私たちが愛用するレンズやカメラの延長線上にある装置(ただしめちゃくちゃ遠い)なんだということが理解できたと同時にその大きさに圧倒され、素晴らしい観測成果を得るために多くの人が働いているということを実感しました。

これも自分が天体写真家の端くれとしてあれこれやっているからこそすばる望遠鏡がどれだけすごい装置なのか理解できたということでもあり、そういう意味では万難を排して訪れる価値はあると思います。

正直に言って運転、特に下りの運転は神経がすり減る思いでした。興味本位で行くものではないです。
この記事が今後どんな方に読まれるかわかりませんが私なりの判断として

  • 天文ファン、特に天体写真家なら一見の価値はあり。感動できます。
  • そうでもないなら無理して行かなくてもいいです。


ということをお伝えしておきたいと思います。


山頂に行くならサンセットを見るほうがよほど絶景ですし、各種ツアーがありますので楽に安全に山頂までたどりつけます。ひとり150ドルから200ドルと決して安くはありませんが、そちらはそちらでお値段なりの価値はあると思います。




その他の注意点


すばる見学に限らずマウナケア山頂まで以下に注意しましょう。

  • ビジターセンターで30分以上高地順応が必要
  • 酸素薄いぞ 走るな 深呼吸しろ
  • 水もこまめに飲め
  • 寒いぞ 風強いぞ
  • サングラス持っていけ

標高2800mのビジターセンターに30分以上滞在して体を高地に慣らす必要があります。
ハワイ島は広くてなだらかなため、2800mまであっさり到達できてしまいますが確実に酸素は薄いです。しっかり体を慣らしましょう。

そして山頂は標高4200mです。酸素濃度は地表の6割程度しかありません。走ったりするのは禁物です。意識して深呼吸を心がけましょう。水もこまめに補給をしましょう。水を持たずに行くのは危険です。

私は心肺機能に自信があるほうなので意識して行動すれば問題はありませんでしたが、中には顔面蒼白になってすばる望遠鏡にたどり着く方もいるとか。

スタッフの中には酸素ボンベを装着している方もいらっしゃいました。これは健康のためというよりも、頭の回転のためだそうです。仕事ですばるに行くということはそれなりの作業精度や判断力を求められるということ。
そういったものを鈍らせないための酸素ボンベなんだそうです。

寒いです。風が強いです。
繰り返しますが標高4200mです。海岸が30度あっても頂上は0度とか普通にあり得ます。風が吹けば体感温度はさらに下がります。防寒には万全の対策をしていきましょう。

山頂ならさぞやきれいな星が見えるかと思いきや、酸素濃度が薄く目の機能も衰えるのだそうです。
山頂ではサンセットにとどめておいて、天体観測はビジターセンター周辺がおすすめです。

曇りでもすごくまぶしいです。運転にはサングラスが必須です。ファッションのためではありません。安全のためです。ぜひきちんとしたサングラスを持っていきましょう。写真家としてレンズにこだわるなら、サングラスにもこだわりましょう。



おまけ


文脈的にどこにも入れられなかったのですがこんなものがあったので紹介します。
DSC03523_R.jpg
確かカメラの交換をする際に使用する機材だったと記憶しているのですが・・・。
何人かのサインがありますね。

DSC03523_RR.jpg
拡大してみると、なんだか見慣れたアスカの顔が。
DSC03523_RRR.jpg
見てみるとヨシユキの文字があります。貞本義行さんですね。すみません、エヴァ世代なので興奮してしまいました。

他にもなんだか見たことのあるような絵がありましたが、わかったのは貞本義行さんだけでした。
有名人になるとサインできるのかー。

どなたかほかのサインが誰のものなのか教えてください。

関連記事
スポンサーサイト



0Comments

There are no comments yet.