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クリアバーティノフマスクの謎に迫れなかった話

星に正確にフォーカスを合わせる手段のひとつに、バーティノフマスクというものがあります。望遠鏡の対物側にスリットの入った板をかざして、回析光を見ながら合わせるツールですね。

ひとくちにバーティノフマスクと言っても素材や形でいろいろと種類がありますが結局どれが正確なの?というところがよくわからなかったので、手元にあったもので比較をしてみることにしました。

1.NorthernCross 樹脂製バーティノフマスク
DSC03181_R.jpg
厚み2mm程度の黒く塗ったいわゆる普通のバーティノフマスクです。
樹脂製とありますがアクリル製かなーと思います。
DSC03182_R.jpg

2.友人お手製のクリアバーティノフマスク
DSC03180_R.jpg
天文関係の友人に作ってもらったバーティノフマスク。厚さ5mm、透明アクリル製の板にスリットを設けたもの。

3.William Optics クリアバーティノフマスク
DSC03177_R.jpg
厚さ2mm、スリットとともにケガキ線が入っています。
DSC03178_R.jpg

この3つに加えて、AsiAir Proのフォーカスエイド機能を加えて4つの比較を行います。

まずはAsiAirのフォーカスエイド機能を使ってみます。合わせた星は・・・すみません忘れましたが2等星くらいだったかな・・・。
Screenshot_20210419_222440.jpg

画面右側に表示されているSizeの値が最小となり、Peakの値が最大となる場所を探す感じです。通常のカメラレンズでもマニュアルフォーカスでピントの「山」をつかむ手法で合わせていく方が多いと思いますが、AsiAirのフォーカスエイドもそれに近いです。フォーカスノブを回しながら数値を確認し、Sizeの最小値・Peakの最大値を探っていく感じ。この時は最小・最大値を過ぎて数値が反転していくところを確認して、そこから元に戻したところを合焦位置としています。
このピント位置を合焦と仮定して、先に挙げた3種類のバーティノフマスクを乗せて回析像を見てみることにします。

1.NorthernCrossの樹脂製バーティノフマスク
Screenshot_20210419_222635.jpg

拡大するとこんな感じ。
Screenshot_20210419_222635_T.jpg
もう少しだけフォーカスノブを触りたくなる程度にはずれているように見えます。

続いては友人お手製のクリアバーティノフマスク。不思議な像が出てきました。
Screenshot_20210419_222551.jpg

拡大すると、回析像が二重になっているようです。
Screenshot_20210419_222551_T.jpg

画面上側に出ている回析像をよーく見てみると、ほぼ合っているかまたはNorthernCrossのと同じ方向にちょっとだけずれているような気がします。

そして本命のWilliam Opticsのクリアバーティノフマスクの結果がこちら。
Screenshot_20210419_222526.jpg


拡大するとこんな感じ。
Screenshot_20210419_222526_T.jpg
ふむ。わずかにずれていますがほかの2つより合っているように見えますね。光条の大きさも段違いなので、より暗い星でも合わせやすいでしょう。逆に1等星だと明るすぎて合わせづらいかもしれません。

ASIAir Proのフォーカスエイドが正しいと仮定すると、これに最も近かったのはWilliam Opticsのクリアバーティノフマスクでしたが、それでも完全一致というわけにはいきませんでした。とはいえASIAir Proもフォーカスノブを前後させてピントの山をつかむという手法ですから絶対に正確とは言い切れませんし、クリアバーティノフマスクでもこの程度であればマイクロフォーカサーに触れるだけでずれてしまいます。

これ以上気にしても疲れるので、フォーカスの位置としてはこのくらいでOKとしておくのが精神衛生上よいということにしておきます。

クリアバーティノフマスクとASIAir Proのフォーカスエイドはどちらも正確に使える、ただし誤差は気にしない。というのを一応の結論とします。





ところでなぜこんなことをやってみようと思ったのか。
それは「友人お手製のバーティノフマスク」ではピントが合わせられなかったから。結果から見ても明らかなように、そもそもきちんと回析光が見えません。クリア素材にスリットを設けただけではダメだったようですせ。制作を依頼した私はもちろん、作ってくれた友人も「透明な板にスリット開ければいけるやろ」くらいのノリだったのですが、そう簡単な話でもなかったようです。
nabeさんが同じようにクリアトライバーティノフマスクを作って失敗していますが、現象としてはおそらく同じでしょう。


「クリア」トライバーティノフマスク大失敗の巻


こちらの記事でnabeさんはクリア部分の内面反射に加えマスク全体の平面性や加工精度が失敗の原因だったのではないかと推測されています。
ただ「友人お手製の」は素材の平面性と加工の精度という点においてはけっこう信頼できる代物だったりします。そうなると違いは厚みとケガキ線の有無、それからスリット形状のわずかな違いくらい。
ケガキ線の有無やスリットの形状は回析光の形状に影響しそうなので、回析光が二重になる原因のうち支配的なのは厚さだと思うのですが、仮に厚さが問題だとすると5mmでも2mmでもそれなりに不要な回析光が出て二重になるはずです。なのにWilliamOpticsの回析光が二重にならない理由がよくわかりません。
今回使ったマスクは3枚ともアクリル製で2mmか5mmの厚さでしたが、厚さ1mmを切る金属製のバーティノフマスクを追加して再テストをしたら何かわかることもあるでしょうか。気が向いたら試してみようと思います。




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1Comments

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フォーカス迷人

パターンダブりについての考察

天体写真のフォーカシングに悩む、通りすがりの者です。
私感ですが、ご友人製のマスクとWilliam Opt.のマスクの差異は、素材のアクリル板の精度の違いで生じている様に思います。

 一般に流通しているアクリル板はローラー圧延されたもので、厚みの均一性はそれなりで、成形時の残留応力の所為で屈折率にも斑(傾斜)があると認識しています。板の上面のエッジで生じた回折光は厚み/屈折率の傾きのため、下面のエッジで生じる回折光とズレが生じているのではと思います。

 これに対し、William Opt.のマスクは、光学用アクリルを精密な金型でコールドキャストしたものであると推測されます。私自身も1枚所有していますが、入手した際にその平滑性や透明度、歪みのなさに驚きました。けがき溝の平滑さから推測するに、レーザーやエンドミル加工ではなく、キャスト時の金型にグレービングされいる溝が転写されたものの様に思います。スリットは所々に溶融が見られコーナーエッジもシャープなのでレーザー加工でしょう。

 広角では、有効口径が小さいため光条が伸びず、透明素材のバーティノフ以外に選択肢がないので、William Opt.の透明バーティノフか、Lonely SpecのStar Sharp2辺りがベストだと思います。標準~望遠であれば、エッチングかレーザー加工のメタル製がベストだと思います。